化粧品とサーモグラフィー:その意外な関係
- 目に見えない温度変化を捉える技術私たちは普段、体温計で体の表面温度を測ったり、天気予報で気温を確認したりして、温度というものを認識しています。しかし、実は私たちの周りでは、目には見えないわずかな温度変化が常に起こっています。それを捉える技術の一つが、サーモグラフィーです。サーモグラフィーは、物体から放射される赤外線を検知し、温度の違いを色の変化として画像化する技術です。医療現場では、体温を測定し、炎症などを発見するために利用されています。そのイメージが強いサーモグラフィーですが、近年、意外な分野でも活用が広がっています。それが、化粧品の分野です。化粧品は、肌に塗布することで様々な効果をもたらします。保湿効果、美白効果、血行促進効果など、その種類は多岐に渡ります。しかし、従来これらの効果を測定するには、使用者の感覚的な評価に頼らざるを得ませんでした。「肌がしっとりした」「肌に透明感が出た」「顔が温かくなった」といった感覚的な評価は個人差が大きく、客観的なデータとして扱うことは困難でした。そこで注目されているのが、サーモグラフィーなのです。サーモグラフィーを用いることで、化粧品の塗布による肌表面の温度変化を、色の変化として視覚的に捉えることができます。例えば、血行促進効果のある化粧品であれば、塗布した部分の温度が上がり、赤く表示されます。逆に、冷却効果のある化粧品であれば、塗布した部分の温度が下がり、青く表示されます。このように、サーモグラフィーは、目に見えなかった化粧品の効果を、客観的なデータとして可視化することを可能にしました。そのため、化粧品の開発現場では、新商品の効果検証や、既存商品の改良などに活用されています。また、消費者にとっても、商品の効果を視覚的に理解する上で、有効なツールと言えるでしょう。