その他 白肌願った時代の落とし穴：鉛白の歴史
古来より、透き通るような白い肌は美しさの象徴とされ、多くの人々を魅了してきました。日本では、その理想の肌を手に入れるために、白粉が使われてきました。白粉は、その名の通り白い粉状の化粧品で、肌に塗布することで、顔色を明るく見せたり、肌の凹凸を隠したりする効果がありました。
白粉の歴史は古く、飛鳥時代にはすでに中国から伝わっていたとされています。当時の貴族たちは、白粉を使って顔や首を白く塗り、その上に紅などで化粧を施していました。白粉は、その後も江戸時代まで、長い期間にわたって女性の化粧には欠かせないアイテムとして愛用され続けました。
しかし、この白粉の原料として使われていたものに、後に健康被害をもたらすことになる「鉛白」がありました。鉛白は、鉛を酸化させて作る白色顔料で、白粉に含まれることで、より白く、きめ細かい仕上がりになるとされていました。しかし、鉛は人体にとって有害な物質であり、長期間使用することで、皮膚の炎症や腹痛、貧血などの症状を引き起こすことが明らかになりました。
現代では、鉛の毒性は広く知られており、化粧品に鉛白を使用することは禁止されています。現在の白粉には、鉛白の代わりに、酸化チタンや酸化亜鉛などの安全な白色顔料が使われています。
