化粧品の色の秘密:分光測色計の役割
私たちは普段、自分の目で見た色をそのまま認識しています。青空を見れば青い、夕焼けを見れば赤い、というように、視覚を通して色を感じ取っています。しかし、化粧品開発の世界においては、この「見たままの色」だけでは不十分です。なぜなら、人の目は主観的な感覚に左右されやすく、同じ色を見ても人によって感じ方が異なってしまうからです。また、照明や周囲の環境によって色の見え方が変化することも、色の認識を複雑にしています。例えば、太陽光の下で見る口紅の色と、室内灯の下で見る色では、同じ口紅でも違って見えてしまうことがあります。
このような色の見え方の個人差や環境による変化は、化粧品開発において大きな問題となります。新しいファンデーションの色を決める際、開発者の主観だけで色を決めてしまうと、他の人の目には全く違う色に映ってしまうかもしれません。また、せっかく美しい色の口紅を開発しても、照明によって色が変わってしまっては、本来の魅力が伝わりません。そこで登場するのが分光測色計です。分光測色計は、光をあらゆる波長に分けて色の変化を数値化する機械です。この機械を使うことで、人の目に影響されることなく、客観的な色の測定が可能になります。分光測色計の登場は、化粧品開発における色の評価を大きく変え、より正確で安定した色の表現を可能にしました。