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電子顕微鏡が解き明かす、髪の秘密

コスメを知りたい

先生、毛髪の電子顕微鏡観察って、どんな時に使うんですか?

コスメ研究家

いい質問だね!例えば、新しいシャンプーを開発したとしよう。そのシャンプーが髪に良いかどうかを調べるために、電子顕微鏡を使うんだ。毛髪の表面がツルツルになっているか、傷ついていないかなどを確認するんだよ。

コスメを知りたい

へえー!それで、電子顕微鏡には種類があるんですか?

コスメ研究家

そうなんだ。毛髪の表面を観察するのに向いているものと、毛髪の内部構造を見るのに向いているものがあるんだ。それぞれ得意なことが違うから、目的に合わせて使い分けるんだよ。

目に見えない世界の髪

目に見えない世界の髪

私たちの目には、つややかな絹糸のように滑らかに映る髪の毛。しかし、その実態は肉眼では捉えきれない、複雑で精巧な構造を秘めています。まるでミクロの世界に広がる、未知の宇宙のようです。髪の毛の本当の姿を鮮明に映し出すことができるのが、電子顕微鏡という魔法のレンズです。
電子顕微鏡は、光の代わりに電子線を当てて対象物を観察する装置です。光学顕微鏡よりもはるかに高い倍率で拡大できるため、これまで見えなかった髪の毛の微細な構造を克明に映し出すことができます。
例えば、髪の表面を覆うキューティクル。電子顕微鏡を通して見ると、魚の鱗のように何層にも重なった薄い板状の細胞で構成されていることが分かります。キューティクルは、外部からの刺激や乾燥から髪を守る、いわば髪のバリア機能を担っています。
さらに内部に目を向けると、繊維状のタンパク質が束になり、複雑に絡み合いながら髪を構成している様子が観察できます。このタンパク質の結合状態や水分量によって、髪の強度や弾力性が大きく左右されます。
電子顕微鏡を用いることで、髪の毛一本一本が、実は複雑な構造と機能を持つ、精巧な建築物のようなものであることを改めて実感することができます。

観察対象 電子顕微鏡による観察結果 役割・特徴
髪の表面(キューティクル) 魚の鱗のように何層にも重なった薄い板状の細胞 外部からの刺激や乾燥から髪を守るバリア機能
髪の内部 繊維状のタンパク質が束になり、複雑に絡み合っている タンパク質の結合状態や水分量で髪の強度や弾力が変わる

二つの電子顕微鏡

二つの電子顕微鏡

– 二つの電子顕微鏡世の中には、肉眼では見えないほど小さな世界を見るための、電子顕微鏡と呼ばれる装置があります。電子顕微鏡には、大きく分けて二つの種類が存在し、それぞれ異なる方法でミクロの世界を映し出します。一つ目は、走査型電子顕微鏡(SEM)と呼ばれるものです。SEMは、例えるならば、髪の毛の表面を指先でなぞるように、電子線を対象物に照射します。そして、対象物から跳ね返ってくる電子をとらえることで、まるでそこに実体があるかのような、立体的な画像を得ることができるのです。二つ目は、透過型電子顕微鏡(TEM)と呼ばれ、SEMとは異なる原理でミクロの世界を覗きます。TEMは、対象物を極めて薄くスライスした切片に電子線を透過させます。この時、電子線がどのように透過していくかをとらえることで、対象物の内部構造を鮮明に映し出すことができるのです。このように、SEMとTEMはそれぞれ異なる特徴を持つ電子顕微鏡です。観察対象や目的によって使い分けることで、ミクロの世界への理解をさらに深めることができるのです。

電子顕微鏡の種類 原理 特徴
走査型電子顕微鏡(SEM) 電子線を対象物に照射し、跳ね返ってくる電子を検出する。 対象物の表面を立体的に観察できる。
透過型電子顕微鏡(TEM) 電子線を薄くスライスした対象物に透過させ、透過の様子を検出する。 対象物の内部構造を観察できる。

キューティクルの状態をチェック

キューティクルの状態をチェック

– キューティクルの状態をチェック

髪の一番外側を覆っている薄い膜がキューティクルです。
キューティクルは、例えるなら魚の鱗のような形状をしていて、髪の内側にあるコルテックスを、紫外線や摩擦などの外部刺激から守る役割をしています。
このキューティクルの状態が良いと、光の反射が均一になり、髪に美しいツヤが生まれます。
また、滑らかな指通りで、まとまりの良い扱いやすい髪になります。

しかし、キューティクルは非常に薄く、傷つきやすいという特徴があります。
ドライヤーの熱やブラッシング、パーマやカラーリングなどの薬剤によって、キューティクルは簡単にダメージを受けてしまうのです。
傷ついたキューティクルは、剥がれ落ちたり、表面がささくれたりしてしまい、髪のツヤや手触りを大きく損ねてしまいます。

SEM(走査型電子顕微鏡)は、キューティクルの状態を詳しく観察するのに最適な方法です。
SEMを用いることで、肉眼では見えないキューティクルの微細な構造まで、拡大して観察することができます。
キューティクルの剥がれや損傷の程度を正確に把握することができるため、髪のダメージレベルを正しく診断することができます。

項目 詳細
キューティクルの役割 髪内部(コルテックス)を外部刺激から守る
キューティクルの状態が良い場合 – 光の反射が均一になり、ツヤが出る
– 指通りが滑らか
– まとまりが良い
キューティクルの状態が悪い場合 – キューティクルの剥がれ、表面のささくれ
– 髪のツヤや手触りの悪化
キューティクルの状態を確認する方法 SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察する

髪の内部構造を探索

髪の内部構造を探索

私たちの髪の毛は、一見シンプルに見えますが、実は複雑な構造を持っています。髪の毛の内部構造を観察するのに役立つのが、透過型電子顕微鏡、つまりTEMと呼ばれる装置です。
TEMは、電子線を使ってミクロの世界を観察することができる顕微鏡です。髪の毛の断面を非常に薄くスライスして、TEMで観察すると、髪の内部構造がはっきりと見えてきます。
髪の毛は、中心部にある「毛髄質」、それを取り囲む「毛皮質」、そして一番外側を覆う「毛小皮(キューティクル)」の3層構造になっています。TEMを使うことで、それぞれの層の状態を詳しく調べることができます。
例えば、枝毛や切れ毛が多い場合は、毛小皮が剥がれてしまっている様子が観察できます。また、カラーリングやパーマなどで髪の毛が傷んでいる場合は、毛皮質内のタンパク質の構造が乱れている様子がわかります。
さらに、TEMは、トリートメントの効果を検証するためにも活用できます。トリートメント成分が髪の毛の内部まで浸透しているかどうかを、TEMを使って確認することができるのです。
このように、TEMは髪の毛の内部構造を観察し、その状態を詳しく知るための非常に有効なツールと言えるでしょう。

装置 特徴 用途
透過型電子顕微鏡(TEM) 電子線を使ってミクロの世界を観察できる顕微鏡 – 髪の毛の内部構造の観察
– 枝毛や切れ毛の状態確認
– カラーリングやパーマによるダメージの確認
– トリートメントの効果検証

時間と技術の結晶

時間と技術の結晶

物質の微細な構造を調べる電子顕微鏡には、大きく分けてSEM(走査型電子顕微鏡)とTEM(透過型電子顕微鏡)の二種類があります。SEMは、電子線を試料に照射し、表面から反射される電子をとらえることで、試料の表面形状を立体的に観察するのに適しています。一方、TEMは、電子線を試料に透過させ、その透過像を拡大して観察することで、試料の内部構造を鮮明に映し出すことができます。

毛髪研究において、特に重要な役割を担うのがTEMです。髪の毛は、表面をキューティクルで覆われ、内部にはコルテックスやメデュラといった複雑な構造が存在します。これらの構造を詳細に観察することで、髪の毛のダメージ状態や、ヘアケア製品の効果などを評価することができます。TEMは、サンプル調整に時間と手間がかかるという側面がありますが、髪の毛の内部構造をナノレベルで鮮明に映し出すことができるため、毛髪研究においては欠かせない存在となっています。

SEMとTEMは、それぞれ異なる特徴を持つ電子顕微鏡ですが、どちらも髪の毛の謎を解き明かすために重要な役割を担っています。これらの電子顕微鏡技術の進歩によって、これまで以上に髪の毛の構造や性質についての理解が深まり、より効果的なヘアケア製品の開発につながることが期待されています。まさに、時間と技術の結晶と言えるでしょう。

顕微鏡の種類 特徴 用途 メリット デメリット
SEM
(走査型電子顕微鏡)
電子線を試料に照射し、表面から反射される電子をとらえることで観察する 試料の表面形状を立体的に観察する
TEM
(透過型電子顕微鏡)
電子線を試料に透過させ、その透過像を拡大して観察する 試料の内部構造を鮮明に映し出す
髪の毛のダメージ状態やヘアケア製品の効果の評価
髪の毛の内部構造をナノレベルで鮮明に映し出すことができる サンプル調整に時間と手間がかかる