コスメを知りたい
先生、化粧品の成分表に『冷浸法』って書いてあったんですけど、どんな方法なんですか?
コスメ研究家
いい質問だね!冷浸法は、昔ながらの香りの成分の抽出方法なんだ。 熱を使わずに、動物性の脂に花の香りを移していくんだよ。
コスメを知りたい
動物性の脂に花の香りですか? 具体的にどんな風にやるんですか?
コスメ研究家
牛や豚の脂を精製して、そこに花を敷き詰めて、香りを脂に移していくんだ。 例えば、ジャスミンやバラの香りを抽出するのに使われていたよ。でも、手間もお金もかかる方法だから、今はあまり使われていないんだ。
香りを閉じ込める、昔の技
– 香りを閉じ込める、昔の技香水に使われている香りのエッセンス、精油。 その香りを花から抽出する方法のひとつに、蒸留法というものがあります。 これは、水蒸気を使い、花びらに含まれる香りの成分を水蒸気と共に取り出し、冷やすことで精油を得る方法です。しかし、この方法では熱に弱いジャスミンやローズなどの花の香りは壊れてしまい、うまく抽出できません。そこで、昔の人の知恵が生み出したのが「冷浸法」と呼ばれる方法です。 熱に弱い花の香りを壊すことなく抽出するために、熱を使わずに精油を抽出する方法です。 具体的には、室温で溶けやすい動物性脂肪や植物性オイルに花を漬け込みます。すると、花びらから香りが溶け出し、脂肪やオイルに移っていきます。この工程を何度も繰り返し、香りが移った脂肪やオイルから不純物を取り除くことで、貴重な精油を作っていたのです。冷浸法は、熱を使う方法に比べて、時間と手間がかかります。そのため、現在ではほとんど行われていません。しかし、花の香りをそのまま閉じ込めることができるため、繊細で奥深い香りの精油を作ることができます。 香水を選ぶ際には、ぜひ、昔ながらの冷浸法で抽出された精油が使われているかにも注目してみて下さい。
抽出方法 | 説明 | メリット | デメリット | 現在 |
---|---|---|---|---|
蒸留法 | 水蒸気で香りの成分を抽出 | – | 熱に弱い花の香りは抽出できない | – |
冷浸法 | 動物性脂肪や植物性オイルに花を漬け込み、香りを移す | 花の香りをそのまま閉じ込められる、繊細で奥深い香り | 時間と手間がかかる | ほとんど行われていない |
冷浸法の仕組み:時間と手間をかけた作業
冷浸法は、花びらから芳香成分を抽出する方法のひとつで、大きく二つの工程に分けられます。
まず初めに、不純物を取り除いた牛や豚の脂肪を、滑らかで平らなガラス板の上に薄く均一に塗り広げます。次に、その上に丁寧に一枚一枚、花びらを隙間なく並べていきます。この時使用する花びらは、開花したばかりの新鮮なものほど、多くの芳香成分を含んでいます。花びらを並べた後は、直射日光の当たらない、涼しくて風通しの良い場所に静かに置いておきます。
すると、時間の経過とともに、花びらに含まれる芳香成分がゆっくりと溶け出し、下にある脂肪に吸収されていきます。数日おきに、香りが移りきった花びらを新しいものと交換し、再び静置します。この作業を、芳醇な香りが最大限に移るまで、根気強く繰り返し行うことが、質の高い香りを抽出する上で非常に重要です。こうして、花びらの甘い香りをぎゅっと閉じ込めた、ポマードと呼ばれる固形の油脂が出来上がります。このポマードは、そのまま練り香水の原料として使用したり、アルコールと混ぜ合わせて液体状の香水に加工したりします。
工程 | 説明 |
---|---|
花びらの準備 | 開花したばかりの新鮮な花びらを用意する。 |
脂肪の塗布 | 不純物を除去した牛や豚の脂肪を、ガラス板の上に薄く均一に塗り広げる。 |
花びらの設置 | 脂肪の上に花びらを隙間なく並べる。 |
静置と交換 | 直射日光の当たらない、涼しくて風通しの良い場所に数日間静置する。数日おきに、香りが移りきった花びらを新しいものと交換する。 |
ポマードの完成 | 芳醇な香りが最大限に移るまで、花びらの交換と静置を繰り返し、花びらの香りを閉じ込めたポマードを作る。 |
香水の製造 | 完成したポマードは、練り香水の原料として使用したり、アルコールと混ぜ合わせて液体状の香水に加工したりする。 |
貴重な香りを取り出す
髪に艶と香りを与える整髪料として古くから愛されてきたポマード。その芳醇な香りは、多くの人を魅了してきました。しかし、ポマードの香りを楽しむには、そのまま髪に塗布するのが一般的でした。 ポマードの香り成分だけを抽出し、香水のように身に纏えたら、という願いを叶える技術が生まれました。
その秘密は、お酒にも含まれる「エタノール」にあります。エタノールには、水に溶けにくい性質を持つ一方で、油に溶けやすい性質を持つという、不思議な力があります。ポマードの香りは、油に溶け込んでいます。そこで、エタノールを用いることで、ポマードから香り成分だけを抽出することができるのです。
具体的な方法としては、まず、ポマードをエタノールに浸します。すると、エタノールがポマードに含まれる香りの成分だけを溶かし出します。その後、エタノールを蒸発させます。この過程は、液体を気体にする「揮発」と呼ばれます。こうして、エタノールだけがポマードから姿を消し、後に残るのは、「アブソリュート」と呼ばれる、非常に濃縮された貴重な香料となるのです。
かつてはポマードの香りとして楽しまれていたものが、アブソリュートという形で香水として生まれ変わる。それは、まるで魔法のような技術と言えるでしょう。
工程 | 説明 |
---|---|
ポマードをエタノールに浸す | エタノールがポマードの香り成分を溶かし出す |
エタノールを蒸発させる(揮発) | エタノールだけが揮発し、濃縮された香料(アブソリュート)が残る |
冷浸法のメリットとデメリット
– 冷浸法のメリットとデメリット冷浸法は、その名の通り、熱を加えずに冷たい溶剤を使って花から香りの成分を抽出する方法です。この方法の最大の魅力は、熱によって香りが変化することを防ぎ、花の繊細な香りをそのまま抽出できる点にあります。特に、ジャスミンやチュベローズなど、熱に弱い花の香りを抽出するのに最適な方法として、古くから香水作りに用いられてきました。熱を加えないことで、花の香りをそのまま閉じ込めた、より自然で奥行きのある香りが楽しめるのが冷浸法の最大の特徴です。香水に使われる花の多くは、熱を加えると香りが変化したり、壊れてしまったりするものも少なくありません。冷浸法を用いることで、そうしたデリケートな花の香りも、損なうことなく抽出することができるのです。しかし、この伝統的な製法には、いくつかのデメリットも存在します。まず、大量の花と時間が必要となる点が挙げられます。花から香り成分を抽出するには、花を溶剤に漬け込む期間が長く、場合によっては数週間から数ヶ月かかることもあります。また、大量の花からごくわずかな量の香料しか抽出できないため、非常にコストがかかる製法とも言えます。さらに、冷浸法で高品質な香料を抽出するには、長年の経験で培われた熟練の技術が必要となります。温度管理や抽出時間の調整など、経験に基づいた繊細な技術が求められるため、誰でも簡単にできる製法ではありません。これらの理由から、現在では冷浸法で抽出された香料は非常に希少で、高価なものとなっています。かつては香水製造の中心的な役割を担っていた冷浸法ですが、大量生産の時代の波にのまれ、今ではほとんど行われていません。しかし、その希少性から、幻の香水製法として、今もなお高い関心を集めているのです。
メリット | デメリット |
---|---|
熱による香りの変化を防ぎ、花の繊細な香りをそのまま抽出できる。 | 大量の花と時間が必要。 |
熱に弱い花の香りを抽出するのに最適。 | コストがかかる。 |
より自然で奥行きのある香りを楽しめる。 | 熟練の技術が必要。 |
冷浸法が生み出す、特別な香り
香りを抽出する方法には様々なものがありますが、その中でも「冷浸法」と呼ばれる昔ながらの方法は、他に類を見ない特別な香りを生み出すと言われています。
冷浸法は、花びらなどの香りの原料を、低温でじっくりと時間をかけて抽出する方法です。熱を加えないため、香りの成分が壊れることなく、花本来が持つ繊細で豊かな香りがそのまま抽出されるのが特徴です。まるで、摘みたての花束を抱きしめた時のような、生花そのものの香りに包まれるような感覚を味わうことができます。
現代の香水製造では、大量生産するために高温で短時間で香りを抽出する方法が主流となっています。しかし、そうした方法ではどうしても香りが人工的になりがちで、本来の自然な香りを表現することは難しいと言われています。
その一方で、今もなお伝統的な冷浸法を用いて香水作りを行うブランドが存在します。それは、大量生産よりも香りの質を重視し、自然本来の香りを届けたいという作り手の情熱の表れと言えるでしょう。もし、そのような香水に出会う機会があれば、ぜひ一度手に取って香りを試してみてください。きっと、他の香水では味わえない、深く繊細な香りの世界に魅了されることでしょう。
項目 | 説明 |
---|---|
方法名 | 冷浸法 |
特徴 | 低温でじっくりと時間をかけて香りを抽出するため、花本来の繊細で豊かな香りが得られる。 |
メリット | 生花に近い自然な香りが得られる。 |
デメリット | 抽出に時間がかかるため、大量生産には向かない。 |
現代の香水製造における位置づけ | ニッチな製法。香りの質を重視するブランドが採用。 |