化粧品の色味を数値で読み解く：三刺激値

色の数値化

私たちは日々、空の青、花々の鮮やかさ、夕焼けの温かさなど、色とりどりの世界に囲まれて暮らしています。しかし、私たちが「赤い」と感じる色も、「青い」と感じる色も、人によってその感じ方には微妙な違いがあります。色の感じ方は主観的なものであり、客観的に伝えるのが難しいものです。

そこで、色の見え方を共通の基準で理解し、正確に伝えるために、色を数値で表す方法が開発されました。この方法を用いることで、色の微妙な違いを数値で明確に表現することができます。

色の数値化の方法の一つに、「三刺激値」と呼ばれるものがあります。これは、人間が色を認識する仕組みを利用したもので、赤、緑、青の光の三原色の組み合わせで、すべての色を表現することができます。それぞれの色の光の強さを数値で表すことで、その色がどのような色合いなのかを客観的に示すことができるのです。

光の三原色とXYZ表色系

– 光の三原色とXYZ表色系

私たちが普段見ている鮮やかな花の色や、夕暮れの空のグラデーション、そしてテレビに映る映像も、すべては光の色。これらの色は、光の三原色と呼ばれる赤、緑、青の光が組み合わさることで生まれています。

たとえば、赤い光と緑の光を混ぜると黄色になり、緑の光と青い光を混ぜると水色になります。そして、光の三原色である赤、緑、青の光をすべて混ぜ合わせると、白い光になります。このように、光の三原色の比率を調整することで、人間が見ることのできるすべての色を作り出すことができるのです。

この光の三原色の考え方を基に、色を数値で正確に表すために開発されたのが「XYZ表色系」です。XYZ表色系は、人間の目の感度を考慮に入れて設計されたシステムで、色の見え方をより正確に数値化することができます。

従来の光の三原色に基づいたRGB表色系では、色の表現範囲が狭く、人間の視覚と完全に一致しない場合がありました。しかし、XYZ表色系は人間の視覚特性に合わせたことで、より自然で滑らかな色の表現が可能になり、色の違いをより正確に測ることができるようになったのです。

三刺激値XYZ

– 三刺激値XYZ

色の見え方は人それぞれですが、客観的に色を表現するために数値で色を管理する方法があります。それが三刺激値XYZと呼ばれるものです。

人間の目には、光を感じるセンサーとしての役割を持つ細胞が存在します。
その中でも色を識別するのは「錐体」と呼ばれる細胞です。
錐体には感度の異なる3種類があり、それぞれ赤、緑、青の光に強く反応します。
この錐体の反応の違いを利用して、すべての色を3つの数値で表現しようとするのが三刺激値XYZの考え方です。

具体的には、Xは赤、Yは緑、Zは青の光の強さを表す数値で、これらの数値の組み合わせによって、ある特定の色を表現します。
例えば、Xの値が大きければ赤い色に、Yの値が大きければ緑色に近くなります。
また、Zの値が大きければ青色に近づくことを意味します。

そして、XYZの値がすべて等しい場合は、無彩色、つまり白、灰色、黒といった色になります。
色の明るさはXYZの値の大きさで決まり、値が大きいほど明るい色になります。

このように、三刺激値XYZを用いることで、人間が感じる色の感覚を数値化し、客観的に表現することが可能になります。

化粧品開発における三刺激値

– 化粧品開発における三刺激値

化粧品開発において、色はとても重要な要素です。例えば、新しい口紅の色を開発するとき、目指す色と実際に作られた口紅の色が少しでも違ってしまうと、商品の印象が大きく変わってしまいます。このような色のわずかな違いを、人の目ではなく、数値で正確に捉えるために用いられるのが「三刺激値」です。

三刺激値とは、色を構成する光の三原色（赤、緑、青）の比率を数値化したものです。この三つの数値を組み合わせることで、すべての色を表現することができます。

口紅の色を例に挙げると、開発者はまず、目指す色の口紅の三刺激値を測定します。そして、実際に製造された口紅の色も測定し、その数値を比較します。もし、目指す色の数値と比べて、製造された口紅の赤色の数値が高ければ、実際の色は赤みが強いということになります。このように、三刺激値を用いることで、色の違いを客観的な数値で把握することができるため、色の調整を的確に行うことが可能になります。

さらに、三刺激値はデータベース化することで、色の管理や共有を容易にすることができます。 例えば、ある化粧品の特定の色を再現したい場合、その色の三刺激値をデータベースに登録しておくことで、誰でも、いつでも、正確にその色を作り出すことができます。

このように、三刺激値は化粧品の色に関する品質管理や開発において、欠かせないものとなっています。

品質管理への応用

化粧品において、色の違いは品質に大きく影響します。同じ製品であっても、製造ロットが異なると微妙に色が異なる場合があり、これは顧客満足度の低下に繋がることがあります。そこで、色のばらつきを抑え、安定した品質を保つために、三刺激値を用いた品質管理が重要となります。

三刺激値とは、人間の目に感知される色を数値で表したものです。これを利用することで、色の感覚的な判断に頼ることなく、客観的な基準で色の管理を行うことができます。具体的には、まず目標とする色の三刺激値を測定し、許容範囲を設定します。そして、製造された製品についても同様に三刺激値を測定し、その値が設定した許容範囲内に入っているかどうかを確認します。もし範囲外であれば、製造工程を見直し、色の調整を行うことで、目標とする色に近づけていきます。

このように、三刺激値を用いることで、人間の目では判断が難しい微妙な色の違いも数値化し、管理することができます。その結果、製造ロットによる色のばらつきを抑え、常に一定の色を保つことが可能となり、顧客に高品質な製品を安定して届けることができるのです。