化粧品と経皮吸収：その仕組みと重要性

経皮吸収とは

– 経皮吸収とは私たちの肌は、体内の水分を保ちつつ、外部からの刺激や異物の侵入を防ぐ役割を果たしています。一見、外部からの物質を一切通さないように思える肌ですが、実際には、 ある程度の物質を通過させてしまう ことがあります。これを「経皮吸収」と呼びます。私たちが日常的に使用する化粧水や乳液、美容液といった化粧品も、この経皮吸収によって肌の奥へと届けられます。それぞれの化粧品に配合されている美容成分は、 経皮吸収されることで目的の場所に届き、肌に潤いを与えたり、ハリを保ったりといった効果を発揮します。しかし、経皮吸収は良い面ばかりではありません。 肌に良い成分だけでなく、有害な物質も吸収される可能性 があるからです。 例えば、アレルギーを引き起こす物質や、発がん性が疑われる物質などが、知らず知らずのうちに体内に吸収されてしまう危険性も潜んでいます。このように、経皮吸収は、化粧品の効果や安全性に大きく関わる要素です。 化粧品を選ぶ際には、 配合されている成分が何であるか、 安全性が確認されているか といった点に注意することが大切です。 また、同じ化粧品を使っていても、肌の状態や体調によって吸収率が変わることもあるため、自分の肌と向き合いながら、適切なスキンケアを心がけましょう。

皮膚のバリア機能

私たちの体は、まるで一枚の薄いヴェールで包み込まれているように、外界と接しています。そのヴェールこそが皮膚であり、外部からの様々な刺激や脅威から体を守る、重要な役割を担っています。まるで城を守る城壁のように、私たちの体を守っているのです。

皮膚は、表皮、真皮、皮下組織という３つの層で構成されています。特に、表皮の最も外側にある角質層は、外部からの異物の侵入を防ぐ最前線として機能しています。この角質層は、レンガを積み重ねて壁を作ったように、角質細胞と呼ばれる細胞が tightly に結合してできています。そして、その細胞と細胞の間は、細胞間脂質と呼ばれる脂質で満たされており、まるでレンガとレンガの間をモルタルでしっかりと固めたように、外部からの水分の蒸発を防ぎ、異物の侵入をブロックしています。

この角質層の構造こそが、皮膚の高いバリア機能の鍵となっています。もし、このバリア機能が低下してしまうと、肌は乾燥しやすくなり、外部からの刺激を受けやすくなってしまいます。その結果、肌荒れや炎症などを引き起こしやすくなる可能性があります。健康で美しい肌を保つためには、このバリア機能を正常に保つことが非常に重要なのです。

経皮吸収の経路

– 経皮吸収の経路物質はどのように肌のバリアを超えるのか？肌は、私たちの身体を外部環境から守るための重要なバリア機能を持っています。しかし、そのバリア機能を保ちながら、美容成分などを肌の奥まで届けることが化粧品には求められます。では、一体どのように物質は肌の奥へと浸透していくのでしょうか？物質が皮膚から吸収される経路は、大きく分けて二つあります。一つは、肌の表面を覆う角質細胞の隙間を縫うようにして浸透していく経路で、「経細胞経路」と呼ばれています。もう一つは、毛穴や汗腺、皮脂腺といった皮膚の付属器官を通り道として浸透していく「付属器経路」です。経細胞経路は、まるでレンガの壁をすり抜けるようなイメージで、分子量の小さい物質や、油になじみやすい性質を持つ脂溶性の高い物質が通りやすいとされています。化粧品で例えると、低分子ヒアルロン酸や、ホホバオイルなどの美容オイルが、この経路で浸透しやすいため、角質層の保湿などに効果を発揮します。一方、付属器経路は、毛穴や汗腺といった、いわば皮膚にあるトンネルを通るイメージです。水によく溶ける性質を持つ水溶性の物質や、電気を帯びたイオン性の物質が、この経路を通って浸透しやすくなっています。化粧水に含まれる水溶性ビタミンC誘導体や、イオン導入器などはこの経路を利用して、肌の奥へと届けられます。このように、物質の性質や、目指す効果に合わせて、最適な経路で浸透させることが、効果的なスキンケアには重要と言えるでしょう。

吸収に影響する要因

– 吸収に影響する要因

化粧品や医薬品などが皮膚から体内に取り込まれることを「経皮吸収」と言いますが、物質がどれだけ吸収されるかは、実は様々な要因によって大きく変化します。

まず、物質そのものの性質が大きく関わってきます。物質の大きさや形、水に溶けやすいか油に溶けやすいかといった性質によって、皮膚への馴染みやすさが異なり、吸収率に差が生じます。

次に、皮膚の状態も吸収率に大きく影響します。例えば、皮膚の温度が高いと、毛穴が開き血行も促進されるため、物質はより吸収されやすくなります。反対に、皮膚が乾燥している場合は、バリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすくなっているため、物質が過剰に吸収されてしまう可能性があります。

さらに、年齢を重ねるにつれて、皮膚は薄く、乾燥しやすくなるため、若い頃に比べて物質を吸収しやすくなる傾向があります。また、体の部位によっても吸収率は異なり、顔や首など皮膚の薄い部分は、腕や足などに比べて吸収率が高いと言われています。

そして、健康状態も経皮吸収に影響を与えます。例えば、皮膚に傷や炎症がある場合は、バリア機能が低下しているため、物質がより吸収されやすくなります。

このように、経皮吸収は物質の性質や皮膚の状態、年齢、体の部位、健康状態など、様々な要因が複雑に絡み合って起こります。そのため、安全かつ効果的に物質を体内に届けるためには、これらの要因を十分に考慮する必要があります。

経皮吸収の測定方法

– 経皮吸収の測定方法化粧品は、私たちの肌に直接塗布するため、その安全性や効果を評価する上で、皮膚から体内へどれくらい吸収されるのかを正しく把握することが非常に重要です。これを「経皮吸収」といい、その測定には大きく分けて二つの方法があります。一つは「in vivo試験」と呼ばれる、実際にヒトや動物の皮膚を用いて吸収量を調べる方法です。この方法は、私たち人間の身体を使うため、より正確な経皮吸収量を調べることができます。しかし、倫理的な問題や費用、時間といった面でいくつかの課題も抱えています。もう一つは「in vitro試験」と呼ばれる方法で、人工的に作った皮膚や、倫理的な配慮から入手した動物の皮膚などを用いて測定します。この方法は、in vivo試験に比べて倫理的な問題が少なく、費用や時間も抑えられるという利点があります。しかし、実際の人の皮膚と全く同じ状態を再現することは難しく、得られた結果が必ずしも人の体内での吸収量と一致するとは限りません。このように、経皮吸収の測定にはそれぞれに利点と欠点があります。そのため、化粧品の安全性や効果をより正確に評価するためには、それぞれの方法の特徴を理解し、目的に応じて適切な方法を選択することが重要です。近年では、コンピューターシミュレーションを用いた予測など、新たな技術の開発も進められています。