クレンジングの秘密！転相ってなに？

化粧品と乳化の関係

私たちの身の回りにある化粧品。その多くは、水と油という、本来ならば完全に分離してしまう性質を持つものを、まるで一つであるかのように混ぜ合わせて作られています。これを可能にしているのが「乳化」という技術です。
化粧水や乳液、クリームなどがその代表例です。これらの製品には、肌に潤いを与える水溶性の成分と、肌を保護する油溶性の成分がバランスよく配合されています。しかし、水と油はそのままでは分離してしまい、製品としての機能や使い心地を損ねてしまいます。
そこで活躍するのが「界面活性剤」です。界面活性剤は、水と油の両方に親和性を持ち、両者の境目に位置することで、水と油を微細な粒状に分散させ、安定した状態を保つことを可能にします。
例えば、乳液をイメージしてみてください。一見均一に見える乳液も、顕微鏡で拡大すると、微細な油の粒子が水の中に均一に分散していることがわかります。これは界面活性剤が、油の粒子を包み込むようにして、水の中で安定して存在できるようにしているためです。
このように、乳化と界面活性剤は、化粧品の品質や使い心地を大きく左右する重要な要素と言えるでしょう。

転相とは？

– 転相とは？化粧品や食品など、様々な製品に含まれるクリームや乳液。これらは、水と油のように本来混ざり合わない成分を、微細な粒子の状態で均一に分散させて作られています。この状態を「乳化」といい、乳化を安定させるために使われる物質を「乳化剤」と呼びます。

転相とは、この乳化の状態が変化する現象のことです。 通常、水の中に油が分散している状態を「O/W型」、逆に油の中に水が分散している状態を「W/O型」と呼びます。

O/W型は、みずみずしくさっぱりとした使用感が特徴で、化粧水や乳液などに多く見られます。一方、W/O型は、油膜で肌を覆うため、保湿性に優れ、クリームやバームなどに用いられます。

転相は、このO/W型からW/O型、あるいはW/O型からO/W型へと、乳化の状態が反転することを指します。

転相が起こると、製品の外観や使用感が変化することがあります。 例えば、クリームが分離したり、油っぽく感じたりすることがあります。

転相は、温度変化や外部からの刺激、あるいは時間の経過など、様々な要因によって引き起こされます。そのため、化粧品開発においては、転相が起こりにくい処方を開発することが重要です。

クレンジングクリームでの転相

– クレンジングクリームでの転相

クレンジングクリームは、毎日のメイク落としや肌の汚れを落とすために欠かせないアイテムですが、その洗浄力の秘密は、「転相」と呼ばれる性質にあります。

クレンジングクリームは、肌に塗布した瞬間は油分が多く含まれた状態です。これは、ファンデーションや口紅などのメイクアップ製品は油分を多く含むものが多いためです。この油分が多い状態のクレンジングクリームは、肌に馴染みやすく、メイク汚れをしっかり吸着してくれます。

そして、このクレンジングクリームを肌の上で優しくマッサージする過程で、手のひらや肌の熱によって水分が蒸発していきます。水分が蒸発すると、クリームの性質が油分が多い状態から水分が多い状態へと変化します。この変化こそが「転相」です。

水分が多い状態へと変化したクレンジングクリームは、今度は水と馴染みやすくなっています。そのため、水で洗い流す際に、吸着していたメイク汚れや皮脂などの油性の汚れも一緒に綺麗に落とすことができるのです。

温度変化と転相

– 温度変化と転相

物質の状態変化は、水が蒸発して気体になるように、温度変化によって引き起こされます。
化粧品においても、温度変化が製品の特性に影響を与えることがあります。
その代表的な例が、乳化剤の性質の変化による転相です。

乳化剤は、水と油のように本来混ざり合わないものを混ぜ合わせるために用いられる物質です。
この乳化剤には、温度によって水になじみやすい性質（親水性）と油になじみやすい性質（親油性）のバランスが変化するものがあります。

温度が低いときは水になじみやすく、温度が高いときは油になじみやすくなる乳化剤を使用した場合、温度変化によって乳化の状態を変化させることができます。
具体的には、低い温度では水の中に油が分散した状態（O/W型）になり、高い温度では油の中に水が分散した状態（W/O型）へと変化します。

この乳化状態の変化、すなわち転相を利用することで、特定の温度帯で効果を発揮する医薬品や化粧品を開発することができます。
例えば、体温付近でW/O型からO/W型に変化する乳化剤を用いることで、皮膚に塗布した際に体温で有効成分が放出されるようなクリームや乳液を作ることができます。

このように、温度変化と転相の関係を理解することは、様々な機能を持った化粧品を開発する上で重要な鍵となります。

転相の利用例

– 転相を利用した化粧品

化粧品において、使用感や機能を向上させるために、乳化状態を変化させる「転相」という技術が用いられることがあります。

転相は、クレンジングクリームだけでなく、様々な化粧品に活用されています。その代表例として、日焼け止めが挙げられます。

日焼け止めには、紫外線を効果的にカットするために、油分を多く含んだ処方が採用されていることがあります。しかし、油分の多い状態では、肌に塗布した際に、べたつきや重たさを感じてしまうことがあります。

そこで、転相を利用することで、これらの課題を解決することができます。日焼け止めに配合された成分の一部は、肌に塗布された直後は、油分が水滴を包み込む「油中水滴型」の状態になっています。この状態では、油分が外側に多く露出しているため、高い紫外線遮蔽効果を発揮します。

そして、時間が経つにつれて、配合されている成分の働きによって、乳化状態が反転し、「水中油滴型」に変化します。この状態では、水滴が油滴を包み込むため、べたつきが抑えられ、さらっとした使用感になるのです。

このように、転相は、化粧品の機能と使用感を両立させるために、重要な役割を果たしています。